もくじ
スペインはEU圏内でも主要な経済拠点であり、日本企業にとっては欧州・中南米市場へのゲートウェイとしての役割も担っています。ここでは、ビジネス渡航をスムーズに進めるために、地理的なポイントと基本的な入国条件を整理します。
スペインへの出張は、首都マドリードと経済都市バルセロナの2大都市への訪問が大多数を占めます。
スペインの首都であり、政治・行政・金融の中心地。官公庁への訪問や、現地法人本社への出張で利用されます。
2024年10月より、イベリア航空による成田=マドリード間の直行便が再開されました(週3便 ※季節・状況により変動あり)。直行便を利用すれば約14〜15時間でアクセス可能です。
観光だけでなく、IT・スタートアップ、見本市(MWCなど)が盛んな商業・工業の中心地です。日本からの直行便はないため、マドリード経由、もしくは欧州他都市(パリ、フランクフルト、ドバイなど)での乗り継ぎが必要です。
地方都市(ビルバオ、バレンシアなど)へ向かう場合も、まずはマドリードへ入り、そこから高速列車(AVE)を利用するルートがビジネスマンには時間の正確性の面で推奨されます。
スペインは「シェンゲン協定」加盟国です。出張管理においては、「滞在可能日数」と「パスポート残存期間」の2点が最も重大なチェック項目となります。
会議、商談、視察などを目的とした90日以内の滞在であれば、ビザは不要ですが、
現地企業から報酬を得る活動や、90日を超える滞在には適切なビザの取得が必須です。
また、欧州渡航情報認証制度(ETIAS)の導入が予定されています。施行時期は延期が続いていますが、施行された際は取得する必要があります。渡航直前に必ず最新状況を確認してください。
ETIAS(エティアス)はいつから必要?2026年導入予定の最新情報解説
シェンゲン協定加盟国での滞在日数は合算されます。過去180日以内に他の欧州諸国(フランス、ドイツなど)へ出張していた場合、その日数もカウントされるため注意が必要です。
シェンゲン協定加盟国からの出国予定日から3ヶ月以上の残存期間が必要です。
また、パスポートの発行日から10年以内である必要があります。
一般的な出張(会議、視察、商談、セミナー参加など)で、滞在期間が90日以内であれば、日本国籍者はビザ免除(査証免除)の対象となり、ビザなしで入国可能です。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。
・あくまで「商用」であり、スペイン現地の企業や団体から報酬(給与)を得る活動ではないこと。
・シェンゲン協定加盟国での滞在日数が、過去180日間の合計で90日を超えていないこと。短期間の出張を繰り返している場合、直近の渡航歴を必ず確認してください。
「現地で実務を行い報酬が発生する場合」や「90日を超える長期滞在(駐在)」の場合は、日本出国前に適切なビザ(査証)の取得が必須です。
特に、システムの導入支援や技術指導などで30日を超えて滞在する場合、実質的な「就労」とみなされるリスクがあるため、専門家への確認を推奨します。主なビザの種類は以下の通りです。
日本の本社からスペイン支社・現地法人へ転勤する場合に申請します。管理職や専門知識を持つ社員が対象です。
高度なスキルを持つ人材が対象。企業内転勤と同様、比較的迅速に審査が進む傾向にあります。
現地企業に直接雇用される場合など。スペインの雇用情勢に左右されるため、取得難易度は高めです。
スペイン国外の企業から報酬を得ながら、スペイン国内でリモートワークを行うための比較的新しいビザです。
ビザの要件や申請書類は、予告なく変更される場合があります。ブログ記事やSNSの情報のみを鵜呑みにせず、必ず最終決定前に公式機関の一次情報を確認してください。
ビザ申請の窓口で、管轄は日本全国です。最新の申請要項、予約方法は公式サイトで確認可能です。
スペインの入国制限や治安情報を確認できます。
渡航直前のトラブルを防ぐため、以下の項目を必ずダブルチェックしてください。特にスペインを含むシェンゲン協定加盟国は、入国審査での書類確認が厳格化する傾向にあります。
航空券の手配前に、パスポートのステータスを確認することが鉄則です。有効期限がギリギリの場合、搭乗拒否や入国拒否のリスクがあります。
※紛失時に備え、顔写真ページ(身分事項ページ)のコピーを紙とデジタルの両方で用意しておくとよいでしょう。
シェンゲン協定加盟国からの出国予定日から3ヶ月以上残っていること。
余裕を持って「入国時」に6ヶ月以上の残存期間があることが望ましいです。
過去10年以内に発行されたパスポートであること。
入出国スタンプの押印用に、見開き2ページ以上の余白があること。
短期商用(ビザなし)での入国であっても、入国審査官(イミグレーション)に滞在目的や帰国の意思を証明する必要があります。スムーズな入国のために、以下の書類をすぐに提示できる状態(手荷物)で所持してください。
※スマートフォンでの画面提示は、通信トラブルや充電切れのリスクがあります。入国審査用書類はすべて紙で印刷し、クリアファイルにまとめておくことが、最も確実で時間を短縮できる方法です。
往復航空券(Eチケット控え)
90日以内に出国・帰国することが証明できるもの。
宿泊先の予約確認書
滞在全日程分のホテル予約証明(ホテル名、住所、電話番号が記載されたもの)。
招へい状(Invitation Letter)
現地訪問先企業からの招待状。訪問目的、期間、滞在費用の負担元などが記載されていると強力な証明になります。
在職証明書(英文)
自身が日本の企業に所属しており、商用目的で渡航することを証明するもの。
海外旅行保険の付保証明書(英文)
万が一の医療費支払い能力を証明するため。クレジットカード付帯の場合は、英語の証明書を発行してもらう必要があります。
出張者を送り出す企業(管理者・バックオフィス)側で確認すべき、安全配慮義務とリスク管理の項目です。
クレジットカード付帯保険だけで十分か補償額や条件を確認しましょう。特にスペインの医療費は高額になるケースもあるため、「治療・救援費用」の補償額が十分か確認してください。
現地の安全情報や緊急時の連絡を受け取るため、必ず登録を行わせてください。
現地でのトラブル(パスポート紛失、事故、病気)発生時に、誰に連絡すべきか(社内担当者、保険会社、現地大使館など)のリストを共有してください。
日当や経費精算のルール、休日移動の扱いなど、事前に明確にしておくことで渡航後のトラブルを防げます。
フライトを降りてから空港を出るまでの流れを解説します。スペインはシェンゲン協定加盟国であるため、「どこを経由してスペインに入ったか」によって審査のタイミングが異なります。
スペイン到着時に「入国審査」と「税関」があります。
経由地で「入国審査」を済ませているため、スペイン到着時は「荷物受け取り」のみで、国内線感覚で到着ロビーへ出られます。
以下は、スペインで入国審査を受けるケース(直行便、または英国、中東等経由)を想定した手順です。
飛行機を降りたら、「Passport Control(パスポートコントロール)」または「Non-EU Nationals」の表示に従って進みます。「EU Citizens(EU市民)」ではなく、「All Passports(すべてのパスポート)」または「Non-EU」のレーンに並びます。
帰りの航空券(Eチケット控え)やホテルの予約確認書の提示を求められることがあります。商用目的(ビザなし)の場合、「Business meeting(商談)」や「Conference(会議)」と答えてください。
※ビザを持っていないのに「Work(仕事)」と答えると、不法就労を疑われ別室送致になるリスクがあります。
マドリードなどの主要空港では、ICパスポート対応の自動化ゲート(E-gate)が設置されている場合があります。日本のパスポート保持者も利用可能なケースが増えていますが、システムトラブルやスタンプ漏れを防ぐため、有人ブースへ誘導されることもあります。係員の指示に従ってください。
入国審査を終えたら、「Baggage Claim」のモニターで便名を確認し、ターンテーブルで荷物をピックアップします。その後、税関(Customs)を通過します。免税範囲内の物品のみ所持している場合は、そのまま通過しますが、以下の条件に当てはまる場合は、必ず申告が必要です。
ビジネスで多額の現金を持ち込む際は、資金源証明(銀行の引出証明など)が必要になる場合があります。
商業貨物とみなされる可能性があります。事前に「ATAカルネ(通関手帳)」の手配が必要なケースもあるため、物流担当者と確認してください。
※スペインを含むEU諸国は、肉製品・乳製品の持ち込み規制が非常に厳しいです。日本からのカップラーメン(肉エキス入り)なども没収対象となるため、持ち込まないのが賢明です。
無用なトラブルで拘束されたり、入国拒否されたりしないよう、以下の点に細心の注意を払ってください。
シェンゲン協定エリアに入国した日付を証明するスタンプは、滞在日数計算(90日ルール)の根拠となります。審査官が押し忘れるケースや、不鮮明なケースがあります。パスポートを受け取ったらその場で確認し、スタンプがない場合はすぐに申し出てください。
短期出張(ビザなし)であるにもかかわらず、現地の工場で「作業」を行うなど、実質的な労働とみなされる行為を説明してはいけません。あくまで「視察」「指導」「会議」の範囲であることを説明できるようにしてください。
「帰国日が決まっていない(オープンチケット)」状態での入国は、不法滞在のリスクありと判断され、入国拒否の理由になり得ます。必ず出国用チケットを用意してください。

アドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス国際空港は、スペイン首都のマドリードにある、4つのターミナルを有する大型国際空港です。
空港のターミナル4から、鉄道C-1またはC-10に乗車してアトーチャ駅まで行くことができます。料金は2.6ユーロで、所要時間は約30分です。(料金は変動する場合がございます。)
空港のターミナル2と4からメトロ8号線に乗車し、ヌエボス・ミニステリオス駅で他のメトロラインに乗り換えることで市内中心部へアクセスすることができます。料金は5ユーロ+空港特別料金3ユーロで、所要時間は約40分です。(料金は変動する場合がございます。)
ターミナル1、2、4から発着し、市内のアトーチャ駅まで運行しています。
料金は5ユーロで、所要時間は約30~40分です。(料金は変動する場合がございます。)
空港から市内までの所要時間は約30分~40分で、料金は33ユーロです。
バルセロナ エル プラット空港は、バルセロナにある2つのターミナルを有するスペイン第2の国際空港です。
L9 Sud線(L9南線)が空港と市内を接続しており、市内中心部まで約50分です。
料金は5.7ユーロです。(料金は変動する場合がございます。)
エアポートバスは空港とバルセロナ中心部のカタルーニャ広場を結んでおり、早朝から深夜まで365日同じスケジュールで運行しています。
市内中心部までの所要時間は約30~40分で、料金は片道7.45ユーロ、往復12.85ユーロです(料金は変動する場合がございます。)
空港から市内までの所要時間は約20~30分で、料金は約35ユーロから45ユーロです。
スペインのビジネス文化は、プロフェッショナルでありながらも人間関係(信頼)を重視します。第一印象と、その後のコミュニケーションの取り方が成功の鍵を握ります。
基本はダークスーツにネクタイが標準です。スペイン人は身だしなみや質の良さを重視するため、靴の手入れやサイズの合ったスーツ選びが重要です。
夏季(特にマドリードや南部)は猛暑となります。ノーネクタイが許容されることも多いですが、初対面ではジャケット着用が無難です。相手が上着を脱ぐように勧めてから脱ぐのがマナーです。
しっかりと相手の目を見て、力強く握手をします(アイコンタクトが弱いと不誠実と取られる可能性があります)。日本よりもパーソナルスペースが近いので、会話中に肩を叩いたり、距離が近くても後ずさりしないようにしましょう。
近年、ビジネスでは時間厳守の傾向が強まっていますが、相手が5〜10分遅れても寛容に対応してください。
会議の終了時間は延びることが一般的です。余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
※スペインの昼食は14:00〜16:00頃です。この時間帯にオフィスに電話をかけても繋がらないことが多いため、アポイント設定時は注意が必要です。
スペインはカトリック教徒が多い国ですが、現在は世俗的な国家であり、厳しい宗教的禁止事項は少ないです。しかし、公共の場でのマナーや独自の規制が存在します。
ビジネスランチでのワインやビールは一般的かつ許容されていますが、泥酔は厳禁です。指定場所以外での路上飲酒(ボテジョン)は多くの自治体で禁止されており、罰金の対象となります。
また、屋内の公共スペース(レストラン、バー、オフィス含む)は全面禁煙です。喫煙は必ず屋外の指定場所で行ってください。
国民の多くはカトリックですが、ビジネスの場で信仰が強く出ることは稀です。ただし、地方の祝日(フィエスタ)は守護聖人に由来するものが多く、地域によって休日が異なるため、事前のカレンダー確認が必須です。
デモやストライキが労働者の権利として頻繁に行われます。これらに遭遇した場合は、興味本位で近づかず、速やかにその場を離れてください。
社員の安全管理と、円滑なビジネス遂行のために周知すべき事項です。特に「盗難対策」は最優先事項です。
マドリード、バルセロナなどの大都市では、日本人がターゲットになりやすいです。「スマートフォンの机上放置」は絶対に禁止してください(食事中含む)。
地下鉄や観光地では、リュックは前に抱えるのが基本です。「ケチャップ強盗(汚れを指摘して気を逸らす)」や「偽警官」の手口を事前に周知してください。
いきなり本題に入らず、最初の5〜10分は天気、サッカー、食事、家族の話などで場を温めるのが作法です。相手がこちらの話に被せるように話してくることがありますが、これは「関心がある証拠」であり、悪意はありません。
また、現場担当者との会議で即決することは稀です。トップダウンの傾向が強いため、持ち帰って検討されることが多く、回答には時間がかかると心得てください。
夕食(ディナー)の開始は21:00以降が一般的です。会食が終わるのが深夜(24:00頃)になることも珍しくないため、翌朝のスケジュールは余裕を持たせてください。
また、ビジネスでの会食で「割り勘」は一般的ではありません。招待した側(ホスト)が全額支払うのがスマートです。
スペインの主要空港(マドリード・バラハス空港、バルセロナ・エル・プラット空港)は非常に広く、手荷物検査や税関手続きに時間を要するため、余裕を持った行動が不可欠です。
出発の3時間前の到着を強く推奨します。
特に免税手続き(VAT還付)がある場合や、夏のバカンスシーズン、大規模な展示会(MWCなど)の開催期間中は、さらに混雑が予想されます。
チェックイン前に、税関(DIVAシステム等の電子端末または窓口)で輸出承認を受けます。※スーツケースに入れる品物はチェックイン前に手続きが必要です。
航空会社のカウンターで行います。
靴やベルト、PC、タブレットの取り出しを求められることが一般的です。
直行便・非シェンゲン協定国経由(ロンドン、ドバイ等)の場合は、スペインで出国スタンプが押されます。
シェンゲン協定国経由(フランクフルト、パリ等)の場合は、スペインではスルーし、経由地(シェンゲン圏を出る最後の空港)で出国審査が行われます。
※搭乗ゲートが直前に変更されることが多いため、電光掲示板やアプリで頻繁に確認してください。
スペインはシェンゲン協定加盟国であり、滞在日数の管理は「あらゆるシェンゲン加盟国での滞在日数の合算」で判断されます。1日でも超過すると不法滞在(オーバーステイ)となります。
日本国籍者はビザなしで短期滞在が可能ですが、「あらゆる180日間の期間内で、シェンゲン協定加盟国での滞在が合計90日を超えてはならない」というルールがあります。
過去の出張や、スペイン以外の加盟国(フランス、ドイツ、イタリア等)への渡航歴も合算されるため、頻繁に欧州出張がある方は計算に注意が必要です。
罰金: 数百ユーロ〜数千ユーロの高額な罰金が科される可能性があります。
悪質な場合や大幅な超過の場合、強制退去処分となるリスクがあります。
最も重いビジネス上のリスクです。パスポート等の情報がSIS(シェンゲン情報システム)に登録され、数年間(通常3年〜5年)、スペインだけでなくシェンゲン圏全域への入国が拒否される可能性があります。
原則として、現地に入ってからの「ビザなし滞在の期間延長」は、人道的な理由(重病など)がない限り認められません。
当初の予定が延び、90日を超えそうな場合は、90日に達する前に一度シェンゲン圏外(日本や英国など)へ出国する必要があります。現地で観光ビザを就労ビザ等に切り替えることは原則できません。
期限が切れる60日前から更新申請が可能です。スペインの役所手続きは非常に時間がかかるため、早めの着手が鉄則です。適切な期間内に更新申請を行っていれば、結果が出るまでの間は滞在許可証の期限が切れていても合法的に滞在可能です。
滞在許可証の更新中や、カード発行待ちの間にスペイン国外へ出る場合は、「再入国許可書(Autorización de Regreso)」の取得が必須です。これがないと、再入国時にトラブルになります。
プロジェクトの遅延等で滞在が延びる際は、「あと数日だから大丈夫だろう」と判断せず、必ず総務・人事担当者または現地の法務専門家へ即座に相談するよう周知してください。
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